66 もう少しだけ

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「この扉を開けたら、娘さんが大人になった姿が見られるよっ」 【アイカが大人に・・】 魂だけになった存在は、扉を開けた。 後ろから俺が見ていた。 そこは、公園。 小さな男の子の手を引いた女性がいる。 「まさと、パパが来たから帰ろうね」 「うん!ママ!」 「アイカ、まさと、ただいま!」 「おかえり、パパ」 「まさと、かわいいかわいい!目に入れても痛くない!」 「あらパパ、私はかわいくないの?」 「何いってるんだ、お前が一番だ」 扉は閉じた。 【ま、まさか。今のが】 「娘さんだよっ。」 【そうか・・子供、がいて。 いい、旦那さんもいて。 ・・よかった、よかった・・。】 「もう、逝ける?」 【はい、ありがとうございました。】 天国の階段を昇る彼を見送る。 その表情は満足そうだった。 光は、消えた。 「魂、食べなかったんですね」 私は、彼の後ろ姿に話しかけた。 「ははっ、たまたまだよ。」 彼の目は たまに怖くなる それは 「腹がすいてしょうがないでしょうに。 彼の魂、美味しかったとおもいますよ。」 本当に腹が減ってる時だ。 死神は最大限に腹が減ると 「まあ、他の魂にするよっ。 俺は用事があるからまたねっ」 見境なく、誰でも魂を食べる。 彼は上着を羽織って、消えた。 その背中には、大きな虎が描かれていた。
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