66 もう少しだけ

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「イチ」 「はい、若」 運転する俺の後ろで。 若は言った。 「りーくんとか言ってた彼、手品師だったな。」 「はい」 「彼の手品は以前見た。 友達の怪我を治していた。 素晴らしかったよ。」 ・・俺は冷や汗をかく。 「若、それよりも美味しいお肉があ」 「彼は、人間じゃないだろう?」 「・・・若」 「お前も気がついてるはずだ。 あの気配に。」 「はい」 「人間ではないということは、他の人たちには黙っておけ」 「かしこまりました。」 「ここで止めてくれ」 「若、どちらに」 若は、スタスタと歩く。 私はたい焼き屋の前に来て話す。 「店主、たい焼きをあるだけくれ」 「え、え、何を」 「金ならある」 どん、と札束を出した。 「わ、わかった」 やはり、金は私の最大の武器だ。 「イチ、ほら。」 「・・若、い、頂きます! う、うまい、オヤジが買ってくれていたものぐらいうまいでふ」 「ここのたい焼き屋は、私が出資しているんだ。 材料は小豆から全てこだわっている。 値は少し張るが、本物の味だ。」 イチはずっと旨いと言いながら笑っていた。
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