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どうやら、俺の言葉は伝わったらしい。
安心した。
タイルに新しく広がる血の赤。体が赤く染まり膝をついた俺。
目の前がボヤけて、だんだん力がなくなってくる。
あと10分持つのかな。
考えたら笑えてきた。
・・もう、俺の命もこれまでか。
「では、あなた様より『代償』を頂きます」
聞こえた。
どこかからはわからないが、ハッキリと。
その瞬間、アオイが消えた。
「・・ア、アオイ?ど、こだ」
「素数で1番小さい数、なーんだっ?」
!?
目の前に、背の高い男性が立ってる。
180センチぐらいだろうか。俺とそうそう変わらない。
オレンジのTシャツにブルーのジーンズ、斜めがけの黒いバッグ。その手には黒い手帳と黒いペン。
ニコニコと笑うその男性は、見たことがある。なぜなら妻が彼の大ファンだからだ。
いつもと服装は違うが。
「あ、あなたは・・林道信太郎さんですよね・・手品師の。
なぜ、あなたがここに」
「素数で1番小さい数、なーんだっ?」
同じことを質問をしてくる。
素数で1番小さな数か、簡単だ。
「・・・2」
「ピンポーンっ」
彼は消えた。
幻覚か。・・死ぬ時に見る。
俺は、嬉しくなって涙が出てきた。
・・最後は数字を言って死ぬ、か。
悪くない。
林道さんに感謝しないとな。さすがは妻がファンになるだけある。
いい、人生だったな。
まさに「LIFE=MATH」の人生だった。
ああ
目の前が
俺の意識はそこで消えた。
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