1 万能になりたい

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どうやら、俺の言葉は伝わったらしい。 安心した。 タイルに新しく広がる血の赤。体が赤く染まり膝をついた俺。 目の前がボヤけて、だんだん力がなくなってくる。 あと10分持つのかな。 考えたら笑えてきた。 ・・もう、俺の命もこれまでか。 「では、あなた様より『代償』を頂きます」 聞こえた。 どこかからはわからないが、ハッキリと。 その瞬間、アオイが消えた。 「・・ア、アオイ?ど、こだ」 「素数(そすう)で1番小さい数、なーんだっ?」 !? 目の前に、背の高い男性が立ってる。 180センチぐらいだろうか。俺とそうそう変わらない。 オレンジのTシャツにブルーのジーンズ、斜めがけの黒いバッグ。その手には黒い手帳と黒いペン。 ニコニコと笑うその男性は、見たことがある。なぜなら妻が彼の大ファンだからだ。 いつもと服装は違うが。 「あ、あなたは・・林道(りんどう)信太郎(しんたろう)さんですよね・・手品師の。 なぜ、あなたがここに」 「素数で1番小さい数、なーんだっ?」 同じことを質問をしてくる。 素数で1番小さな数か、簡単だ。 「・・・2」 「ピンポーンっ」 彼は消えた。 幻覚か。・・死ぬ時に見る。 俺は、嬉しくなって涙が出てきた。 ・・最後は数字を言って死ぬ、か。 悪くない。 林道さんに感謝しないとな。さすがは妻がファンになるだけある。 いい、人生だったな。 まさに「LIFE=MATH」の人生だった。 ああ 目の前が 俺の意識はそこで消えた。
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