1 万能になりたい

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俺は目を開けた。 真っ白な天井だ。 何処なんだ、ここ。 「あなた!」 声がする方を見るがボヤけてる。横に置いてあるメガネをかける。 俺の顔を心配そうな顔が覗き込む。 妻だ。涙を流している。 「春菜(はるな)か。・・ここ」 「病院よ。あなたをここまで運んで来てくれた人がいるの。」 俺は、助かったのか。 でも誰が運んで来てくれたんだ。俺は体は細いが身長は180近くある。運んで来るなんて出来るのか。 ふと見ると、妻はスーツの上着を持っていた。よく見ると血で汚れている。 「気がついたら、その人はいなくなってて。代わりにあなたの体にこの上着がかけられてたらしいの。 急所を刺されて血だらけだったはずなのに、きれいに治ってたって。 運んで来たのは背が高くて、ニコニコした人だって。」 背が高い ニコニコしてる まさか。 『素数(そすう)で1番小さい数、なーんだっ?』 すぐに浮かんだ顔。 ・・彼か? ならこの上着、洗って返さないと。 俺は顔を伏せながら、ハッと思い出して妻に聞いた。 「アオイは?」 「アオイちゃん、行方不明らしいの。今、警察の人が探してくれてて」 妻は言いづらそうにしていた。 『では、あなた様より「代償」を頂きます』 その声が聞こえた瞬間、私は別の場所にいた。 真っ赤な部屋、真っ赤な天井に真っ赤な床。 血がどろどろ流れて来てる。 さっきのお風呂場みたい。 泣き張らした目で、私は辺りを見渡す。 「・・どこ・・ここ」 「『代償』の部屋だよ、アオイっち」 髪の毛が赤い男の子が、私に笑いかけた。
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