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「・・『代償』」
「嫌なお母さんだったね。・・アオイっちには同情するけどさ。
小野先生、だっけ?・・あの熱血先生を、頼れば良かったじゃん。絶対何とかしてくれたっしょ。チャンスは何度もあったよね?
あの人のことだから、下手すると養子にしてくれたかもよ。」
赤い髪の毛をいじりながら、彼は言った。
もう片方の手には、大きな赤いハサミ。
その刃からは血がどろりと垂れている。
「小野先生には言えなかった・・。
迷惑かけたくなかった。
でも・・あんなに私のこと考えてくれてたなら、ちゃんと相談すればよかったな。
・・バランス取ってたカップの水、こぼれちゃったみたい。
舛方さんの言うこと聞いて、小野先生に相談してればよかった。」
そこに落ちてる『節制』と書かれたタロットカードを拾い。
ポロポロ涙を流すアオイっち。
ねえ。
ヨースケっち。
何で彼女の願い、止めてくれなかったの。
根はこんなに優しくて、いい子なのに。
俺っち、悲しくなるよ。
視線の先、アオイっちの後ろにヨースケっちがビデオカメラを持って立ってる。目を伏せてた。
中にいる『彼』は、そんなヨースケっちの肩に手を置いてた。もう片方の手に巨大な漆黒の鎌を持ちながら。
・・ねえってば。
2人共。
この悲しみ、どうにかしてよ。
もう一度呼び。
いつまでやればいいの
こんなこと
悲しみでいっぱいになりながら。
ハサミを振り上げた。
「・・・じゃあね、アオイっち。
また会えたら、ホットチョコレートでも一緒に飲もうよ。」
俺っち、気がついたら泣いてた。
誰か止めてよ。
この涙を。
気がついたら『彼』が、俺っちの肩に手を置いてた。
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