1 万能になりたい

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「・・『代償』」 「嫌なお母さんだったね。・・アオイっちには同情するけどさ。 小野先生、だっけ?・・あの熱血先生を、頼れば良かったじゃん。絶対何とかしてくれたっしょ。チャンスは何度もあったよね? あの人のことだから、下手すると養子にしてくれたかもよ。」 赤い髪の毛をいじりながら、彼は言った。 もう片方の手には、大きな赤いハサミ。 その刃からは血がどろりと垂れている。 「小野先生には言えなかった・・。 迷惑かけたくなかった。 でも・・あんなに私のこと考えてくれてたなら、ちゃんと相談すればよかったな。 ・・バランス取ってたカップの水、こぼれちゃったみたい。 舛方さんの言うこと聞いて、小野先生に相談してればよかった。」 そこに落ちてる『節制』と書かれたタロットカードを拾い。 ポロポロ涙を流すアオイっち。 ねえ。 ヨースケっち。 何で彼女の願い、止めてくれなかったの。 根はこんなに優しくて、いい子なのに。 俺っち、悲しくなるよ。 視線の先、アオイっちの後ろにヨースケっちがビデオカメラを持って立ってる。目を伏せてた。 中にいる『彼』は、そんなヨースケっちの肩に手を置いてた。もう片方の手に巨大な漆黒の鎌を持ちながら。 ・・ねえってば。 2人共。 この悲しみ、どうにかしてよ。 もう一度呼び。 いつまでやればいいの こんなこと 悲しみでいっぱいになりながら。 ハサミを振り上げた。 「・・・じゃあね、アオイっち。 また会えたら、ホットチョコレートでも一緒に飲もうよ。」 俺っち、気がついたら泣いてた。 誰か止めてよ。 この涙を。 気がついたら『彼』が、俺っちの肩に手を置いてた。
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