118人が本棚に入れています
本棚に追加
「お帰り、ヨースケっち」
「ただいま戻りました、タクさん」
「この仕事、大変でしょ。
・・ね。」
タクさんが笑う。その顔は悲しげだ。
彼もツラいんだ。
「安原さんが結構苦しい思いをされながらやってたのは、わかります。
彼は笑うことが許されなかったので。」
そう。
僕はまだ。
「笑える」のだ。
まだ、マシだ。
・・・僕は、間違っていただろうか。
意地でも彼女の願いを止めるべきだっただろうか。
・・彼らのために。
棚から本を取り出して、眺めた。
病院から出てきた男性2人は、笑いながら話していた。
『ヨースケ。・・お前は間違ってないよっ。
彼女が願ったことさ。そこまでお前が考える必要はないよっ』
そう、ですよね。
「タクさん、僕は1人では何も出来ません。あなたの力が必要です。
・・これからもよろしくお願いいたします。」
「任せといてよ」
「心強いです。
・・・。」
僕は黙り、タクさんを見る。
不安は、やはり尽きない。
安原さんがいたら、違うのだが。
そして、林道さんが隣にいてくれたら。
・・僕は、本当に何も出来ないヤツだ。
「大丈夫だよ。
サトシっちも、『りーくん』も。
・・ちゃんと戻ってくるから。」
タクさんも顔を伏せている。
泣いてるようにも見えた。
僕は黙って、彼にホットチョコレートを出した。
外は晴れていた。
最初のコメントを投稿しよう!