1 万能になりたい

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「お帰り、ヨースケっち」 「ただいま戻りました、タクさん」 「この仕事、大変でしょ。 ・・ね。」 タクさんが笑う。その顔は悲しげだ。 彼もツラいんだ。 「安原(やすはら)さんが結構苦しい思いをされながらやってたのは、わかります。 彼は笑うことが許されなかったので。」 そう。 僕はまだ。 「笑える」のだ。 まだ、マシだ。 ・・・僕は、間違っていただろうか。 意地でも彼女の願いを止めるべきだっただろうか。 ・・彼らのために。 棚から本を取り出して、眺めた。 病院から出てきた男性2人は、笑いながら話していた。 『ヨースケ。・・お前は間違ってないよっ。 彼女が願ったことさ。そこまでお前が考える必要はないよっ』 そう、ですよね。 「タクさん、僕は1人では何も出来ません。あなたの力が必要です。 ・・これからもよろしくお願いいたします。」 「任せといてよ」 「心強いです。 ・・・。」 僕は黙り、タクさんを見る。 不安は、やはり尽きない。 安原さんがいたら、違うのだが。 そして、林道さんが隣にいてくれたら。 ・・僕は、本当に何も出来ないヤツだ。 「大丈夫だよ。 サトシっちも、『りーくん』も。 ・・ちゃんと戻ってくるから。」 タクさんも顔を伏せている。 泣いてるようにも見えた。 僕は黙って、彼にホットチョコレートを出した。 外は晴れていた。
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