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病院からの帰り、俺はとぼとぼ歩いていた。
俺の家族は、つい先日死んだばあちゃんだけ。
母親も父親も妹もじいちゃんも。
交通事故で死んだ。
それからは、ばあちゃんが俺を育ててくれたんだ。
病院のベッドで、ばあちゃんを見た時。
すごく安らかな顔をしていた。
「とてもいいお顔をされている。
まるで、旦那様がお迎えにいらしたかのようですね。」
ばあちゃんも、皆の所に逝った。
医者は、泣いていた。
俺も、泣いた。
癌です
その言葉が、頭から離れない。
死ぬ、のか。
俺は、死ぬのか。
皆の分まで生きなきゃいけないのに。
まだ高3なのに。
しかもあの名門校の一ツ橋高校だぞ。
俺には夢があった。
全員の前に立ち、誰でも笑顔に出来るあの仕事。
小さい頃から憧れてたんだ。
緑色の帽子を握る手に、力がこもる。
ドン!
誰かにぶつかる。
見上げると、ニコニコと笑った顔。
「カズ!カズじゃん!」
「シン・・。」
こいつは、俺の親友のシン。
俺と同じクラスだ。
こいつはメチャクチャ頭がいい。頭の良さは学校で1番と言われてる。
そして人気者のこいつは、小学生の時から誰かを笑わせるのが好きだった。
だから俺たちは約束したんだ。
高校卒業したら、同じ夢を追いかけようって。
だから、こいつのためにも俺は死ぬわけにはいかないんだ。
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