2 親友に会いたい

4/26
前へ
/1212ページ
次へ
「将来は、何になりたいんだ。ユキエ。」 「たかぽんみたいな先生になりたい! 私、たかぽんみたいに皆を笑顔にする仕事がいいの!」 放課後、俺は職員室で進路に悩む生徒の話を聞いていた。 俺は、進路指導の教科担任でもある。 高校3年生、1番大事な時期だ。 その大事な時期に関われることを、俺は誇りに思う。 皆、悩み苦しむ。俺に様々な思いをぶつけてくる。中にはもう死にたいと言ってくる生徒もいる。そんな生徒には俺の想いを全力でぶつける。 生徒が最善の道に行けるようにするのは、教師として当然のことだ。 ユキエは教師になりたいらしいが、親が代々医者の家系らしく。 ユキエに医者になれと強制してくるらしい。 ただ、母親は彼女を応援してくれている。教師も人の役に立てる素晴らしい仕事だと理解していた。 父親は断固、医者にすると聞かない。 聞くところによると、父親はかなりの名医との噂。不治の病と言われていた難病の新薬を作ったらしい。人呼んで、「奇跡の医者」。 その名に相応しく、彼女の父親のおかげで救われた命は数知れずだ。 ・・気持ちはわかる。 娘にも人を助け、全員を笑顔にさせる仕事をさせたいんだろう。 でも、教師だって皆の前に立ってその場にいる全員を笑顔にさせられる、中々いい仕事なんだ。 それを理解させてやる。 ずれたメガネをくいと上げて、俺は話す。 「父親に会わせてくれ。俺が説得する。 教師になりたいなら、なればいいんだユキエ。 諦めたら、ダメだ。」 「でも・・医者の権力を使ってたかぽんを押さえつけるかも・・。 学校とかに働きかけたりして、授業させなくしたり・・。そんなのいや」 ユキエが涙目だ。 俺は彼女に向かってニッコリ笑う。 「大丈夫。あっちがそうなら、俺は数学で押さえつけてやるさ。今日はちょっと用事があるから無理だが。 明日、行くからな。お前の家に。」 それを聞いた彼女は小さく頷き、帰っていった。 医者ならかなり頭がいいだろう。 得意な数学なら、負けない自信が俺にはある。必ず納得させる。 俺は、メガネをくいと上げた。
/1212ページ

最初のコメントを投稿しよう!

118人が本棚に入れています
本棚に追加