2 親友に会いたい

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「ダメダメ、部外者は入ったらダメだよ!」 「あの、俺は林道さんに助けて頂いた者なんです。この上着を返したいんですよ、会わせて下さいお願いします!」 警備員にやっぱり止められたが、俺は頭を下げる。 「ダメなものは」 「俺に何か用事っ?」 警備員の後ろに、私服の林道さんが立っていた。斜めがけの黒いバッグは、あの時と同じものだ。 「りーくん、すみません。この人があなたに会いたいって聞かなくて。 すぐ追い出します」 「俺は、一ツ橋高校の数学教師で小野隆と言う者です! 俺を助けてくれましたよね!?・・あなたにお礼が言いたいのと、上着を返しに来ました!」 警備員に体を掴まれながらも、彼に向かい大きな声で叫んだ。 「その人、入れていいよっ」 楽屋に招かれ、俺は緊張しながら椅子に座る。彼は世界を飛び回る超有名な手品師。 あのハリウッド俳優や歌手も、彼の手品が大好きと聞く。 そんな彼と、俺は会っている。妻も連れて来たかった。 彼は手品の練習をしていた。 ポン、ポン、と色んなものを消したりまたは出現させたり。こんな目の前で見れてるのは本当にすごいことだ。妻にも見せたら大喜びするだろう。 マネージャーだろうか、メガネをかけた男性が俺をじっと見ている。 「ああ、そいつはフジって言うんだっ。気にしなくていいよ」 あっちから話しかけてくれた。俺はフジさんに頭を下げる。 「フジです。」 そう一言話され、手を出された。 俺も立ち上がりニコニコして握手をする。 緊張する手で名刺をもう1枚出しフジさんに渡し、1枚は上着と共に机に置いた。 「小野隆と申します。一ツ橋高校で数学の先生をしています。妻があなたの大ファンなんです。林道さん。」 「一ツ橋高校って言ったらあの名門校じゃん!そこの数学の先生なんだね、すごいなあ!俺も数学大好きなんだ、気が合いそうだねタカシ君っ! じゃあ後で奥様にはサインでも書くよぉ」 彼はニコニコして俺に話してくれる。手品の練習中なのに怒らないなんていい人だな。 「あの、・・ありがとうございました。あの時は助けてもらって。おかげさまで、怪我はもう何ともないです。」 「いいってことだよぉ。タカシ君。よろしくねぇ。・・俺は林道(りんどう)信太郎(しんたろう)。 りーくん、って呼んでいいよ。」 ステッキをクルクルと回しながら、ニコニコして答える彼。 その高い身長、スラリとした体型、短くサラサラした黒髪、長い指に整った顔。 その童顔の純粋そうな笑顔はまるで、ユージのように見える。そして優しい。 妻が彼のファンになるのも納得だ。
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