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ファミレスを後にした。
涙が止まらない。
一ツ橋高校だって、俺達は一緒に受験した。
あいつは頭が元々いいやつだったから模試はいつもA判定。
俺はいつもC判定で。
一緒に高校行きたかったあいつは深夜まで、俺に勉強を教えてくれた。
だから今、こうして一ツ橋高校に通える俺がいた。
シンには恩があった。
その恩を仇で返してしまった。
「!・・ごふっ!」
血を吐いた。
その真っ赤な液体に、俺は驚く。
周りが騒然とし、救急車の音がする。
気がついたら、倒れてた。
「進行が速い・・ここまでとは」
40代ぐらいのその男性の医者は、あの時俺に癌と言った江田先生だった。
顔を歪め俺の体を見ながら言った。
「っ、う、あ」
声もうまく出せない。
「僕はあなたの主治医の江田康之です。
最後まで、諦めず頑張りましょう」
頷けなかった。
俺の命は、あと2週間。
ベッドで過ごすことを余儀なくされ。
あれ以来、シンとは連絡を取っていない。
夜中。
天井を見上げながら思う。
・・あんなこと、言わなきゃ良かった。
声が出せないから仲直りも出来ない。
このまま、仲直りしないで死ぬなんて。
緑色の帽子をギュッと握る。
カラン、コロン。
「いらっしゃいませ」
暗闇から、声がした。
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