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体が動かない。
タカシは、小宮さんの後ろにいる。
ぴくりとも動かない。
「タカシ!そんなヤツ間違ってるだろ!?
君はいつも僕に言ってたじゃないか、『生徒達は俺の子供だ』って!
戻ってきなよ!」
「・・・・。」
彼は動かない。
僕はさらに言う。
「僕は親友だからわかるよ、タカシがどれだけ生徒達を大事にしてるか。
毎日授業のやり方考えては、僕の前でやってくれてたよね。ほとんどウケ狙いみたいな授業をさ。
生徒達だって、いつも楽しい授業をしてくれて親身になってくれる小野先生が大好きなんだ!
その生徒達を裏切るなんて、タカシらしくないよ!」
小宮さんは笑う。
「ムダだよ、彼はもう私の言いなりな」
「だよな、ユージ。
らしくないよな。」
タカシが俺を見て、笑った。
その赤く染めた目を小宮さんに向ける。
「な、何故だ。私の力が効かな」
「もうユージや生徒達の前に現れないでくれ」
小宮さんが消えた。
僕も動けるようになった。
タカシが、急に力が抜けたように崩れ落ちる。
「タカシ、大丈夫?」
「・・ちょっと、疲れたよ。寝かせてくれ」
「うん」
横になる彼の姿を、僕はじっと見ていた。
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