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「藤本様、あなたの願いは何でしょうか。」
「や、うあ、らさん。
し、ん、に・・あ、い、らいれす。
あや、らり、たい」
俺は、つたない言葉で精一杯伝えた。
もう、俺の命は尽きてしまう。
来月も来年も、過ごせない。
カレンダーの「1994年9月」という数字が、滲んで見えた。
安原さんは頷く。
「親友のシン様にお会いしたい、謝りたいと。
病気を治すことも出来ますが、そうではなくても宜しいですか?」
病気を治しても。
また、同じ態度でシンに当たってしまったら意味がない。
今、この状態なら。
恥ずかしがらずに、シンに伝えられるような気がするんだ。
「ら、い・・。
し、ん、・・り、つ、らえらい、ころ・・あり、らす」
どうしても、シンに伝えたいことがある。
この言葉で、どのくらい理解されるかわからないけど。
アイツは頭がいいから、大丈夫のはずだ。
「かしこまりました。では、この紅茶をお飲み下さい。
『代償』は、あなたの寿命を13日頂きます。」
震える手で紅茶を飲む。
俺の命は、あと1日になった。
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