2 親友に会いたい

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「ユキエが家出?」 「はい、小野先生。主人と娘は家出いたしましたので。 一ツ橋高校も退学として下さい」 放課後、俺は父親を説得するためにユキエの家に来ていた。昨日の夜中のことはあまり覚えていない。気がついたらユージが俺をじっと見ていたんだ。 何があったんだろう。・・ユージに聞いてみたいが怖くて聞けない。 いやそんなことよりも。 ユキエだ。 出てきた母親の言葉にメガネをくいと上げた。 隣にいるユージが慌てる。 「あの、娘さんに会わせて頂けませんか?占いで塔のカードが出たんです! 大きな力により何かが崩壊する意味で」 「帰って下さい!」 ユージの言葉に、ピシャリとドアが閉まった。 「何か申し訳なかったな、ユージ。わざわざ来てもらったのに。」 俺は歩くユージに合わせて自転車を押しながら、とぼとぼと道を歩く。 ユージは小さな帽子を直してから、首を左右に振る。 「タカシは、説得しようとしたら数学しか出てこないからね。 話術なら僕が上手いから、大丈夫だと思ったんだけど。 僕の方こそごめん」 「いいんだ、俺が永遠に円周率言うよりマシさ。」 それしか手がなかったし。 「タカシ、飲みにでも行かない? 美味しいおでん屋さん知ってるんだ。」 ユージが俺に笑いかけた。 「ああ。行くか。」 俺も笑い、自転車を押した。 真っ黒い影が、俺達を見ているのに気がつかずに。
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