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この目は、昔からだ。
目が赤くなってる瞬間は、誰でも俺の言うことを聞いた。
嫌な友達。
仲がいい友達。
先生も。
ユージですらも。
道行く人ですらも。
そう、誰でも。
怖かった。
言葉1つで他人を思いのままに動かせる俺自身が。
目が赤い瞬間を他人に見られた時は『具合が悪い』『充血してるんだ』とウソをついては元に戻るのを待ったりした。
「・・・はあ、はあ・・」
目が普通に戻る。
一気に全身の脱力感に襲われる。
いつものことだ。
『お前が、死神か悪魔だったらどうすんだよ』
東さんの言葉が頭を霞める。
・・まさか。俺は。
そういう存在なのか?
両手をじっと見た。
そう言えば、前にユージから悪魔と死のタロットカードを見せてもらったような気がする。
人を支配し欲望のままに生きる悪魔。
自分のやりたいことをするためなら、何でもする。
死のタロットカード。
フードは真っ黒だった。それが人の命を狩る死神。
俺は、どっちなんだ。
人を支配し欲望のままに生きるのか、はたまた人の命を狩るのか。
ハッとして首を左右に振る。
何を考えてるんだ俺は。
そんなのは全部、数学で証明出来るんだ。
ありえない。
俺は人間だ。
今日はトンカツだ。速く行かないと冷めてしまう。サクサクしてて、脂身の部分とか旨いんだろうな。
俺はワクワクしながら部屋を出た。
「なあ、ヨースケ。」
甘い匂いがする喫茶店。
戸棚で本を見るこいつに、俺は話しかけた。
「何ですか、ユー先輩。」
「そこに映るタカシとか言う先生、要注意だぜ。
あと、親友のユージも。」
「わかっています」
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