118人が本棚に入れています
本棚に追加
LIFE=?
カラン、コロン。
「いらっしゃいませ、林道さんありがとうございます。」
「ちょっと疲れちゃったから、戻っていいかなあっ?」
「はい」
りーくんが消える。
目の前には、黒い縁のメガネをかけた人がいる。
「あの、ここは?」
「願いが叶う喫茶店でございます。僕は町田と申します。」
頭を下げた町田さん。それを聞いた俺は、驚いた。
「ここが・・願いが叶う喫茶店・・。
あんたか?・・俺の生徒の願い聞いたの」
「はい」
ガシ、と俺は彼の胸ぐらを掴んだ。
「何でだよ、何で聞いたんだ!
・・どうして止めてくれなかった。アオイは・・お前が願いを叶えたせいで・・
俺の生徒を返してくれよ!」
「・・・・。」
黙る、か。
・・・異次元にいるヤツになんか、たかだか人間の気持ちなんて伝わらないか。
ポタッポタッ
!?
俺の手に、水滴が落ちてきた。
もちろん、室内だから雨なんか降るわけない。
町田さんは、メガネを取る。
両目から涙を流していた。
「・・それが、僕の仕事です」
今まで見たことのないような、冷たく、悲しげなその潤んだ瞳は俺を真っ直ぐ見た。
俺は目を赤く染めて彼を見る。
「泣くぐらい苦しいなら・・。
そんな仕事、辞めてしまえばいいじゃないか!そんな悲しいなら!」
「辞めませんよ。・・僕の仕事だから。
大切な人を取り戻したいから。」
・・俺の力が、効かない?
「あなたの力は、僕には効かない。
・・小野隆先生。
あなたは何者ですか?」
目を赤く染めた彼は、俺を見た。
「俺は・・人間だ」
「ちがう」
「!」
町田さんがすぐ側に来て、俺の額に手を当てている。
意識が遠くなる。
胸ぐらを掴んでいた手は、力なくスルスルと落ちていく。
そのまま倒れてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!