3 LIFE=MATH

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LIFE=? カラン、コロン。 「いらっしゃいませ、林道さんありがとうございます。」 「ちょっと疲れちゃったから、戻っていいかなあっ?」 「はい」 りーくんが消える。 目の前には、黒い縁のメガネをかけた人がいる。 「あの、ここは?」 「願いが叶う喫茶店でございます。僕は町田と申します。」 頭を下げた町田さん。それを聞いた俺は、驚いた。 「ここが・・願いが叶う喫茶店・・。 あんたか?・・俺の生徒の願い聞いたの」 「はい」 ガシ、と俺は彼の胸ぐらを掴んだ。 「何でだよ、何で聞いたんだ! ・・どうして止めてくれなかった。アオイは・・お前が願いを叶えたせいで・・ 俺の生徒を返してくれよ!」 「・・・・。」 黙る、か。 ・・・異次元にいるヤツになんか、たかだか人間の気持ちなんて伝わらないか。 ポタッポタッ !? 俺の手に、水滴が落ちてきた。 もちろん、室内だから雨なんか降るわけない。 町田さんは、メガネを取る。 両目から涙を流していた。 「・・それが、僕の仕事です」 今まで見たことのないような、冷たく、悲しげなその潤んだ瞳は俺を真っ直ぐ見た。 俺は目を赤く染めて彼を見る。 「泣くぐらい苦しいなら・・。 そんな仕事、辞めてしまえばいいじゃないか!そんな悲しいなら!」 「辞めませんよ。・・僕の仕事だから。 大切な人を取り戻したいから。」 ・・俺の力が、効かない? 「あなたの力は、僕には効かない。 ・・小野隆先生。 あなたは何者ですか?」 目を赤く染めた彼は、俺を見た。 「俺は・・人間だ」 「ちがう」 「!」 町田さんがすぐ側に来て、俺の額に手を当てている。 意識が遠くなる。 胸ぐらを掴んでいた手は、力なくスルスルと落ちていく。 そのまま倒れてしまった。
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