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LIFE=?
「俺が行った時、包丁を振り上げたユージの母親がいたので・・この教科書で1回は防いで。
それでも向かって来たので、・・この彫刻刀で首と胸を1回ずつ」
「刺したのは首と胸だけか?」
ケイスケさんは、間髪入れずに聞いた。
僕は黙って紅茶を淹れる。
「はい」
「・・いいや。あんたには殺せないよ先生。
生徒、親友、奥さん。それだけ相手を思いやれるあんたが、人殺しなんか出来ない」
ラッキーストライクの箱を、トントンとテーブルで叩くケイスケさん。
「俺がやったと認めてますが」
小野様は、ずれたメガネをくいと上げた。
その目は、何かを訴えてるようだった。
【ユージを守らないと。】
小野様の心の声が、聞こえる。
タクさんと契約したケイスケさんにだって、聞こえてるはずだ。
「・・先生が刺したのは足と腕だ。そのあとに殺したのは」
「俺です!」
【俺なんだよ!・・俺だ!
俺がやった。・・そうすれば解決するんだ】
「タカシっち。
正直に話して。殺したのはユージっちでしょ?」
タクさんが、目を赤くして小野様を見る。
「・・は、い。
ユージ、が、首と胸を、刺しま、した。
俺は、足を刺しました。その後ユージの母親に、灰皿で殴られ、ました」
小野様の目が赤くなり、口が勝手に動いている。
悪魔は、死神を操れる。
悪魔同士、死神同士ではお互いを操れない。
林道さんは別格だ。悪魔も死神も操れたり従わせられたりする。
でも、小野様は林道さんの「死神の目」が効かなかった。
慎重に、やらないと。
「うんうん、聞き分けがいい子だね。タカシっち♪
ヨースケっちの目を見て?」
彼は、言われるがまま僕に視線を合わせた。東さんがそれを見たと同時に言う。
「・・ヨースケ、頼む。」
「小野様。僕の目をそのままずっと見ててください。」
場面が飛んだ。
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