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LIFE=?
『フン、お前みたいな臆病者になんか私は刺せないよ!ほら!刺せるもんなら刺してみな!』
俺が見てない場面。
ユージの母親は、気絶した俺を盾にしていた。
ユージは一生懸命、柄の部分の血をティッシュで拭き取り、ティッシュの上から彫刻刀を2本持ち、ブルブルと震えてた。
『ひ、卑怯だぞ、タカシを離せ!』
『ほら、彫刻刀を返しな!』
グサ
ユージが
刺した
恐怖で震えながら
1本は喉に
『ぐうえええ』
奇声を上げる。
血が大量に俺とユージにかかる。
俺は、ユージの母親の手から離れどさりと倒れた。
ユージの母親は、それでも喉元にある彫刻刀を引き抜いた。いつの間にかティッシュは落ちている。そしてユージに近づく。
『あ・・あ、あ・・
く、くるな・・くるなあああ!』
『ぎいあああああ!』
胸にもう1本、刺す。
同じように胸から外した瞬間に絶命した。
目を開けながら。
『お、おかあ、・・さ・・』
その場面を見てガタガタと震え、ユージは気絶した。
目を覚ましたら、ユージの母親は死んでた。
殺したのは、間違いなく。
俺の近くで倒れてるユージだ。
でも、こいつがいなかったら。
俺は、死んでた。
彫刻刀は俺の物。
だからこれは俺の罪だ。
事実、俺も刺しているのだから。
ユージは、悪くない。
救急車を呼び真っ赤な手を見て、震えながら思った。
場面が喫茶店に戻る。
俺は、ふかふかのソファーに力なく座った。
「彼自身は、小野様がお母様を殺したと思っていますね。
ショックが強すぎて、殺した時の自分の記憶を消したのでしょう」
「・・・自分の罪を消した、か。」
町田さんの言葉に、東さんが反応した。
「そうですね。舛方様のしたことは犯罪ですが・・僕もわかるような気がします。
僕にも、守るべき存在がいますから。
その人達のためだったら・・。」
「町田さん・・
でも、刺したのは俺です。」
「先生にとって人生とは数学なんだよな。・・だから脳が、あの女の動きを止めるという計算をしちまったのさ。
まあ刺したにしろ、先生は正当防衛が認められるよ。まあ、ユージは明らかに殺意持ってたけど」
東さんが頷いて言った。
「ユージがやってくれなかったら・・俺達はユージの母親に殺されてたんです!
あいつがいてくれたから、今俺はこうして生きて数学教師が出来るんです。」
「・・・・」
「確かにあいつは人を殺しました。でもそうなる原因を生み出したのは、紛れもなくあいつの母親なんです!」
「・・先生」
東さんはため息をつく。
「やってくれてなかったらきっと俺があいつの母親殺してた。だから、捕まえるなら俺を」
「俺は、誰かを逮捕しにきたんじゃねえよ。
自殺で片付いてるし、担当してた人はもう死んでるしな。
・・これで、吉本さんに真実を報告出来る」
カラン、コロン。
東さんは出て行った。
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