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LIFE=?
「よかったですね。」
町田さんが、俺にアイスコーヒーを出した。
「はい。自分を見つめ直せたような気がします。ユージとはこれからも、親友でいます。」
「タカシっち、優しいね。」
赤い髪の毛の彼は、タクさんというらしい。
いつの間にか普通の目に戻り、ニコニコ笑ってた。
「町田さん。」
「はい」
「俺の願いは、過去を清算したいです。」
「・・親友が自身の母親を殺してしまったことを隠し、ずっと1人で抱え苦しかったでしょう。話せて、ようやく肩の荷が降りたのでは?
それで、十分でしょう。」
町田さんは笑う。
・・そうかもしれない。
「・・はい。あの・・。
町田さんは・・「大事な人を取り戻すために仕事をしてる」と言ってましたが・・。
そんなに・・大切な人なんでしょうか」
町田さんは、少しだけ顔を伏せたがすぐに笑った。
「ええ。・・『彼』は大切な人ですから。」
「・・そうですか・・。」
俺も、大切な妻を取り戻すためなら。
この仕事をやるかもしれない。
町田さんの悲しげな瞳を見た。
その瞳の奥に、深い闇が見えた気がした。
「次は、あなた自身が大切な人と向き合う番ですよ。
こちらはもう必要ありませんね。」
「え」
町田さんのその手には、「たのしいさんすう」と書かれた古い教科書と、彫刻刀があった。
気がついたら、元いた公園のベンチに座ってた。
鞄に入れておいたはずの教科書と彫刻刀がなくなっている。
「あなた」
気がついたらそこに妻が、立っていた。
スーパーの袋を少し重そうに持っていたので、俺は慌ててその袋を持つ。
なかには、ボディークリームやサプリメント、下着類がたくさん入っている。
・・入院でもするのか?
「どうした、具合でも悪いのか?」
「以前、体調が優れなくて病院に行ったの」
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