3 LIFE=MATH

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LIFE=MATH。 怖い。 妻は、病気なのではないか。 重大な病気で、もう助からなかったら? 俺は、1人になってしまう。 嫌だ。 リーマン予想が解けるまで、一緒にいると決めたのだ。ゼータ関数より魅力的な妻は俺にとっての運命の人だ。 そんな彼女が死ぬのは嫌だ。 「・・病名は、何だ」 震える声で、俺は言った。 すると、妻はクスリと笑う。 「家族が1人増えるの」 妻は、お腹をさする。まさか。 袋の中をよく見る。乾燥を防ぐクリームや栄養価が高いサプリメント、下着はマタニティー用品の物だ。 「え」 「男の子。」 「え」 「父親になるのよ、あなた」 頭が追い付かない。 ずれたメガネを直せない。 父親?父親?父親?俺が? 子供?子供? 男の子?男の子? 汗が止まらない。 「・・えと・・んと・・その。 家事は全部俺がやる!食事や洗濯はしてから家を出るよ。買い物も仕事帰りに行くよ。 君は仕事、産休取ってゆっくり座って、のんびりテレビでも見ててくれ。何かあったらすぐ電話をくれ。 授業中でも、タクシー飛ばしてすぐ駆けつけるから。 誰か来てもドアを開けなくていい、宅配の人以外は。 出来る限り早く帰る。 家までの距離を計算して、1番速く帰れる方法で帰る。これからは。 点Pみたいに素早く移動するよ。」 自分でも言ってることが理解できない。 嬉しいとは、こういうことなのか。 また妻はクスリと笑いながら、「ありがとう」と言った。
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