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鎧を纏わなければ、今頃俺の身体は穴だらけだった。
その姿を想像してしまい、背筋を凍らせる。
――どうやら、俺を閉じ込めた奴は、俺に相当の恨みを持っているらしい。
本気で殺しにかかっている。
「そう簡単に死んでたまるか!」
針だらけの鎧を床に投げ捨てる。
五月蠅い音を立てながら鎧は転がり、その衝撃で折れた針が無数に傍に散らばった。
「要するに罠だらけだってことだな。うっし、上等……」
気合を入れ直し、足を踏み出した瞬間。
重力がなくなった。
確認しなくてもわかる。
床が目の前に来て、後は真っ暗な壁。
そのスピードに追い付けない光の珠は通路に置き去りとなった。
足元から吹き上がる突風。
巻き上がる髪と服。
身体の奥底から湧き上がる、内臓が浮き上がる感触。
いくつもの感触、感覚を感じながらも、目の前は一寸の光もない闇。
そう、ひたすら、暗闇の中を。
俺は、落ちていた。
「あああああ!」
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