ヘランはあなたが大好きなの。

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「とにかく、早くここから出ねぇと――」 そう、言葉を発した瞬間。 トス、トス、トス 何かが動く気配があった。 足音、にしては静かで 生き物、にしては軽さがあって 僅かな光の中で目を凝らすと、動いている影は通常の人間の3倍以上の大きさだった。 その影は、一定のリズムを刻んで光の中に現れる。 その姿に、俺は――多分、変な顔になった。 「ぬいぐるみ?」 それはそれは、つぶらな黒い目が輝く可愛らしいぬいぐるみだった。 ただ可愛いのはその顔立ちともこもことした体形だけであって。 大きさと、持っているものは可愛くなかった。 巨大な斧、剣、槍―――― それを可愛らしい手に、ぶらんと力なく持って近づいてくる姿は、とても可愛いとはいえるものではなく。 むしろ、その可愛さが恐怖を駆り立てる。 「ここの主は……本当、いい趣味しているようで」 熊は斧、兎は剣、象は槍。 3匹のぬいぐるみは、2本の足でしっかり歩き、血濡れのそれらの武器を手に、ニコニコとしたぬいぐるみとしてぴったりの顔で近づいてくる。 逃げないと、やばい。 咄嗟にそう感じ、俺はぬいぐるみたちに背を向けた。
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