ヘランはあなたが大好きなの。

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「うげ……趣味悪!」 大好物であるはずのトマトジュースがこんなにも気分の悪いものに変貌し、顔をしかめ舌を出してなんとか口に入らないよう唾を吐く。 それでもいくらか飲み込んでしまった気がして気分が悪かった。 出来る限り口をぎゅっと結び、気合で残りのぬいぐるみを切り刻む。 暫くすると、その風圧で白い闇は晴れ、光の珠が照らす明かりで通路は満たされる。 足元を見て、その惨状に俺は思わず口鼻を手で隠して「う」と声を上げる。 トマトジュースでぬれた、刻まれた可愛らしいぬいぐるみたち。 それは、血みどろの生き物がぐちゃぐちゃに並んでいるようにも見えて、その光景を見た覚えのある俺はその様子と匂いを思い出し一瞬吐きそうになった。 だが、その場は強烈なトマトの匂いがするだけだ。 「さっさと出よう」 斧を収納魔法に戻し、通路の先へと走り出す。 一刻も早く、この場から脱出したかった。 頭のいかれた奴から逃げ出したかった。 そう思って、走って、走って、走って。 ついに、魔法以外の光が通路の先に見えた。 「出口か!」 喜びを感じて俺はひたすら走る。 そしてついに、光の下へ―― 「いらっしゃい、勇者様」 光は、出口ではなく。 円形の部屋の中心に、少女がいるだけだった。
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