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「ヘランは、勇者様をずっとお待ちしていました」
ヘランと名乗った彼女は、一歩、足を踏み出す。
「勇者様を愛しいあまり、手作りの力作監獄に入れてしまいました」
可愛らしい声なのに、とんでもない言葉を発する。
そしてまた一歩、俺に歩み寄る。
「勇者様の全てを見たくて、ずっと見ていました」
恍惚の笑みへと変わる表情は可愛らしさが残るのに、どこか狂気じみていた。
また一歩、近寄る。
「誰も見たことない勇者様の血みどろの姿を見たくて、いっぱい罠をしかけてしまいました。でも、勇者様はさすがですね。すべて跳ねのけてくださいました」
一歩、いや、三歩、大股でスキップするように歩んで、ヘランは目の前に来た。
「私、勇者様が大好きなんです」
潤んだ、大きな瞳が見上げてくる。
「好きで好きで独り占めしたくて好きで好きで全部私のものにしたくて好きで好きで好きで好きで好きで大好きで」
息をつく与える暇もないほどの早口でまくしたて、ヘランは俺の頬に可愛らしい手でそっと触れた。
「……こんな、欲張りな私じゃ……やっぱり、嫌ですか?」
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