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視線を感じる
直感でそう思い、俺は辺りを見回した。
だが、誰もいないし、何かのレンズの光も見当たらない。
気配も、音も、何もしない。
「気のせいか……」
どこか納得のいかないものを感じながらも、鉄格子に向き合った。
両手を空けるため、光の珠を天井に向かって投げ、電気の変わりにする。
光は丁度天井の真ん中あたりにひっつき、鉄格子の部屋を全て照らしていた。
その光で鉄格子の向こうも見えたが、タイルの床が見えるだけで、その向こう側はひたすらの暗闇だった。
「よし」
俺は足を一歩引き、手を構えると、前足にぐっと体重をかける。
「うおりゃあ!」
掛け声と共に蹴りを繰り出す。
ガン
「あああああ」
足の先に痺れが残るだけで鉄格子はビクともしなかった。
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