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ゾッ
痛みの中で恐ろしい悪寒が背中を走り、思わず立ち上がって辺りを見回した。
何者かに見られているようで仕方がないのに、やはり、誰もいない。
「……いや、気にしてる場合じゃねぇな」
一刻も早くここを出なければ。
勇者としてこんな監獄を脱獄できなくてどうする。
俺は決意を新たに、両の拳を腰で構える。
武闘家の精神統一で拳にありったけの力を込めていく。
魔法じゃダメなら、武闘家の気合
「ばくれつ拳!」
目をカッと見開き力を鉄格子へと解き放つ。
強化された無数の拳が鉄格子に当たる。
最初はビクともしなかった鉄格子が、何発もの衝撃で原型を変えていく。
100発目、というところで鉄格子は完全に元の形を失い、天井から離れて倒れていった。
ガシャン
流石に何発も打つと拳がヒリヒリと痛んだが、鉄格子が外れた成功の喜びに比べればそんなことは大したこともないので「よし」と俺は思わず歓喜の言葉を漏らす。
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