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「さて……」
天井にくっつけていた光を自分の手に戻し、数歩先に飛ばす。
暗闇の中、足元と前方を光が照らす。
何の変哲もない通路が続いているだけのようで、それが逆に怖ぇな、と思いつつ俺は足を踏み出した。
その瞬間。
真横からガタン、と音がし、床が揺れた。
「なん……っ」
なんだ、と言葉を発する前に銀色に輝く鎧が現れた。
ただの鎧か、ビビって損した……と前を向こうとした、刹那。
ガコ、と何かが外れるような音と共に、鎧が倒れてきた。
「一体何……」
倒れてきた鎧に向き、咄嗟に両腕でガードする。
が、勇者の勘がそれだけじゃダメだと脳内で警報を鳴らす。
「纏え!」
その勘を頼りに、俺は魔法の鎧を纏った。
ガン
キン
ギキィィィン……
鉄同士がぶつかる音がその場に響く。
五月蠅い心臓の音を聞きながら、俺は倒れてきた鎧を見つめる。
ただの鎧ではなく、幾本もの鋭く太い針が生えた鎧を。
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