僕と大木

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僕と大木

その大木に寄り添えるのは、小鳥さんのように歌で楽しませたり、太陽さんのように明るく力を与えてくれる人だろう。もし彼、大木が僕を害虫だと思わないのだとしたら、そのとき僕は信じられるのだろうか。いや、信じてはいるけれど、心のどこかで自分なんかと思ってしまう。 ずっと僕を見ているものがいる。小鳥や太陽とは違う、変わった生き物。僕は大地に根で繋がっているから、「どうしました?」とは聞きにいけない。堂々としたコミュ障、それが僕なのだ。あぁ、そんなに不安そうな顔をしないで、こっちに来て! 言葉には出せないけれど貴方を受け入れたいのだから。 僕が勇気を持って話しかけると、彼は落ち着いた振る舞いで「友達になりましょう」と言われた。僕にそんな価値があるのか、なにか裏があるのではないか、勘ぐってしまうけれど聞けないし信じたい。今度、大木に寄り添って見ようと思う。僕だって友達になりたかったし、そばにいたいと思っているから。 僕の幹に貴方は寄り添ってきた。小鳥よりも身近に感じて暖かくて、太陽よりも身近に感じて暖かくて、幸せとはこういうことなのかと思う。暑すぎず、寒すぎず、適度な位置を守ってくれる貴方を見て親近感を覚える。貴方はそばにいてくれるから、夜になってもそばにいてくれるから。だから好きなのだ。 僕は寄り添っているうちに大木の悲しかったこと、嬉しかったことを肌から感じた。僕のことを信じてくれているのだと感じ嬉しかった。信じられているのだ、僕も信じなければ! 心の蔦を振りほどいて全ての心を露出する。この状態で断られたらきっと立ち直れないのだろう。お願い、僕をそばに居させて。信じたことを死ぬまで誇りにさせてくれ。
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