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赤さん④
夫は血まみれで倒れていた。まだピクリピクリと、動いている。
ふと、夢の中で見た、あのエコー画面を思い出す。赤い中で蠢く何か。
ああ、あれはきっと、このことだったのだな。
静かに納得し、床に腰を落とすと、途端に股から水が溢れ出した。
「えっ?」
破水? そんな、どうしよう。
「きゅ、救急車」
テーブルの上に携帯電話が見える。そこまで這って行こうとしたが。
「かはぁっ」
腹の中からの衝撃に、私は仰向けになった。ぐ、ぐ、ぐ、と、腹が押されている。
「あ、あ、あ、あ、」
腹を見れば、先程からと比べて、皮膚が何倍にも伸びている。何かが、中から、出ようとしている。
「あ、ああー!」
血が噴き出した。辺り一面が、血の海となる。私の腹を破って、それは出てきた。
「あ、あ、」
真っ赤な、カラダの。
「わたしの、あか、さん?」
それは瞼を開けると、瞳の色も赤だった。生まれたばかりのそれは、探るように立ち上がると、私を置いて部屋を出て行った。
ああ、そうか。あの、エコー画面は本当だった。
本当に真っ赤な、人間だったのだ。
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