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赤さん①
高校の時の友人に子供が生まれた。流行りというおむつケーキを持って、会いに行った。買ったあとググったら、「おむつケーキ」の予測変換で「いらない」と出てきた。まじか。
プレゼントと出生祝を渡すと、友人はとても喜んでくれた。子供は女の子だと言う。生まれて半年も過ぎ首がすわったからと、抱っこさせて貰う。
とても可愛い。
「ゆりのところは、まだなの?」
うん、そう。
「自分の子供はやっぱり可愛いよー」
うん、そう。
「早く作んなきゃ。もううちらも三十だよ」
うん、そう。
友人の何気ない言葉に、曖昧に笑う。
会社の同僚だった夫と結婚して、早いもので三年。会いに行った友人は、私よりあとに結婚していた。
夕飯の準備をしていると、休日出勤だった夫が帰ってきた。
「おかえり」
「ただいま」
「今日、友達のとこ赤ちゃん見に行ってきたんだ」
「へえ」
「可愛かったよ」
「うん」
「うちもさ、そろそろ欲しいよね」
あまり重くしないように、何気なく言ってみた。
「そうだね。腹減ったなぁ、今日飯何?」
そう言って、夫はあくびをしながら、着替えを取りに行ってしまった。
夫の実家へ行くたび、遠回しに孫はまだかと言われる。自身の息子ではなく、いつも妻の私に。その度に、出された食事の味が、分からなくなる。
「こればっかりは運もあるから、あんまり、ゆりを責めないでよ」
呑気にビールを飲みながら、夫は言う。私も曖昧に笑い、癖で、すみませんと小さく呟く。
レスなのに、どうして運で子供ができるんだろう。夫は、赤ちゃんはコウノトリが運んできてくれるとでも思っているのか。
布団に寝転がりながら、夫の実家でのことを思い出す。チリチリと、嫌な痛みが心を覆う。
今日、友人の子供を抱いて、思った。やっぱり私、赤ちゃんが欲しい。
散々ゲームをやってから疲れたからと寝てしまっている夫の隣で、スマホでネット検索する。赤ちゃん、女一人で生む方法ーー。
馬鹿馬鹿しい。そんな方法、あるわけ無い。
検索結果は、未婚の母に関するものばかりだった。私が知りたいのは、その前の段階の方法なのに。
ため息をついて、スマホの画面を適当にスクロールしていると、気になるものを見つけた。開くと、どうやら匿名掲示板のスレのようだ。
そこには、セク◯スしないで女が赤さんを妊娠する方法、とあった。
赤さんとは、確かネット用語で赤ちゃんのことだ。
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