ボクを嫌いなきみ

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「私あなたが嫌いなのよ」  うん知ってるよ。 「どうしてすぐ勝手にどこかへ行ってしまうの」  どうしてだろうね。気付いたらそうなっているんだ。 「すぐ汚れちゃうし」  今日も水たまりで泥だらけになっちゃったね。 「どうしてなにも言ってくれないの」  こまったね。それだけはどうしてもできないんだよ。 「どうしてお手々が取れちゃったの」  きみとはぐれているときに近所の犬にかまれちゃったんだ。 「どうしてきれいに直せないの」  きれいじゃなくてもいいよ。きみが直してくれることがうれしいんだよ。  しくしくと泣きながらきみはボクの手をぬいつける。  その手つきはあぶなっかしくてボクはハラハラする。  はぐれちゃってごめんね。汚れちゃってごめんね。なにも言えなくてごめんね。お手々が取れちゃってごめんね。きれいに直らなくてごめんね。 「夜いっしょにねてるって言ったらクラスの子に笑われたし。いっしょに学校には来てくれないし。ママはそんなに汚れたぬいぐるみすてなさいって言うし……だから私あなたが嫌いなの」  それでもボクはきみが好きだよ。いつもいっしょにいてくれてありがとう。
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