お兄ちゃんといっしょ

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「……なんだ、コウくんまだ起きてんのか」 少し疲れた顔で笑いながら、床に転がっている俺の鼻先をつつく。「泡出てるぞ」と笑いながら口元を拭ってくれた。 お互いに社会人になってから会うこともめっきり減っていたけれど、俺も生きてりゃ共に24、おっさんには若造とか言われても、社会に揉まれるタケオはすっかり大人の顔つきになっている。今の俺からすれば、こいつが親でもおかしくない年齢でもあり、不思議な感覚だ。 タケオは大学時代は気ままなひとり暮らしをしていたが、就職してからは仕事が安定するまでまた実家に戻ると言っていた。「毎日メシの用意がされてるって最高すぎる」と出戻った実家のありがたみに感動していたので、もしかしたら同棲とかをするまではこの家に暮らすのかもしれない。 けど、今のタケオに彼女なんて多分いないだろう。昔から女子にも人気だったのに、この男はなぜか彼女を作らない。高校時代と大学時代それぞれの彼女を2人ほど知っているが、その2人しかいないはずだ。いや、俺には2人でもすげーなって思うけど、タケオほどの男でたったの2人というのがあまりにも意外なのだ。そしていずれも、1年と続いてなかったと思う。 昔タケオが借りてた部屋に行くと、女の子がいた形跡もなく、代わりに高校の制服を着たサトルくんが来ていることがよくあった。仲の良い兄弟だなあとは思っていたが、2人はケンカをしたことが無いと聞いて驚いたものだ。4つ離れていればケンカもしないものなのだろうか?まあ4歳差なら小学生と高校生、中学生と大学生……となるわけで、確かに言い合いになるネタもあまり無いのかもしれない。よほど生意気な弟や暴君のような兄貴なら別だが、サトルくんは昔からいい子だし、タケオも優しくていいヤツだ。お父さんとお母さんの優れた子育てのたまもののような兄弟なのだろう。
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