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四の数字が二つ並んだ自分の年齢。四つ葉のクローバーなど四には幸せの象徴もあるけれど、やはり「ヨン」は「シ」と認識してしまう正世は「何事もなく、なんて贅沢言いませんから大きな事故、病気にならず一年そこそこ無事に過ごせますように」と元旦は近所の神社仏閣に護摩焚きの予約を入れ、朝五時起きで夫と二人で行ったものだ。大丈夫。「シニン」の四十二歳を超えたからこその四十四歳なのだからと自分を励まし生きてきた。そうして早いもので今年だってもうすぐ半分終わろうとしている。
正世が近所のスーパーでのパートを始めたのは去年の八月だったから、まもなく一年が経とうとしていた。正世はパンや牛乳、ヨーグルトなど賞味期限が短い食品、アイスクリームと冷凍食品、常温保存が出来ない食品を担当する部署に配属され、品出しや値下げ作業、プライスカードとバーコードの価格登録が合っているかチェックしたりするのが仕事だ。時々放送が入りレジを手伝うこともある。
毎日十五時三十分に鳴るこの音楽は「従業員の皆さん、商品整理と品出しをしてください」の合図である。今日はヨーグルトの値下げが多くてまだ全然終わっていないが、十六時を過ぎれば夕食の買い物へとお客さんはどんどんやってくる。スーパーのかきいれ時だ。だからこそ値下げを終わらせたかったのだが、命令音楽が鳴ったので仕方ない。正世はやりかけの作業をやめ、一度バックヤードへと下がった。
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