89人が本棚に入れています
本棚に追加
牧野の問いかけに頭がフリーズを起こした。すぐに、春風がカジノに帰っていないという話しを理解した、と、同時に焦り出した。
もしかしたら、警察と手を組んでいる可能性があるかもしれない。
もしかしたら、もうすぐ側まで来ているかもしれない……。
そんな、最悪な想定が頭をよぎる。
『おい、聞こえないのか?』
「……」
ここは、大人しくシラを切るしかない。そのあとは、なんとかなる!
「すいません。春風さんのことですよね」
『そうです。春風のこと何か知りませんか?』
俺は、ワザと間を開けてから「分からないです」と答えた。
『……そうですか。分かりました。では、失礼します』
通話が切れた。通話が切れた途端に、一気に脱力感と冷や汗が出た。
「はぁ……。免れたのか?」
なんだか、疲れたな……。
俺はそのまま、コンクリの壁を背にして寝に落ちた。幸いまだ暖かい季節でよかった。
翌朝、眩しい日差しと共に目を覚ました。こんなに早く起きたのは小学生ぶりだろう。
俺は、そっと高架下の陰から辺りを見渡す。人の気配はない。
「これから、どうするか……」
もう、アパートには戻れないし、下手をすれば警察がいるかもしれない。それよりも、春風が車の中で死んでいるって知るかもしれない。
「……はぁ」
どうして、あの時殴ってしまったのかな??
「殺すつもりはなかったのに……」
最初のコメントを投稿しよう!