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あーあ……。現実から逃げたい。
俺は、寂れたスロット屋に入っていた。住宅地の中にあるスロット屋だ。お客はあまりいない。俺は、気になる台を探し始める。それよりも、人を一人殴り殺しといて、こんな所に来るなんて我ながら重症だな。
「……この台にしよ」
ガメラの柄が付いた台だ。そういえば、昔良くビデオを借りて見ていたな。
椅子に座り、財布から千円札を取り出した。
調子がいい、かなり調子がいい。どんどん金額が増えていく。一時間で十万以上勝っている。
ジャラジャラジャラジャラ!
スロットから大量のメダルが出てくる。本当に調子がいい!!
「ははっ……。このまま、逃亡しちゃおうかな」
こんだけの金があれば、どこにだって行ける。
ジャラジャラジャラ!
「また、増えたなー」
あー、このまま、このままずっとこの時間が続けばーーーー。
「月野涼介さんですか?」
「え?」
誰だよ、俺今忙しいんだよ……。
「け、警察?!」
隣の人が驚いた声を上げた。なんだ、こいつか。でも、俺と同じ名前と苗字なんて珍しいな。
「驚かせてしまいすいません。私達、こちらの方にご用がありまして」
「月野さんでいらっしゃいますよね?」
…………。え、俺?
俺は、恐る恐る後ろを振り返る。俺の背後には、二人の警察官がいた。
「署まで同行お願いします」
五十路くらいの警官が、懐から手帳を取り出した。ただの警官じゃない。刑事だ!
「わかりました」
と、素直に言い、外に出たと同時に走り出した。
「な!」
二人の警官と刑事は驚いた顔をしていた。
「誰が一緒に行くかってーの!!」
「待ちなさい!!」
刑事の方が追いかけて来た。
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