88人が本棚に入れています
本棚に追加
/73ページ
一人目 食人“マニア”
なあ、知っているか? 何百年もの前、食材が不足していた時期があったって話し。
その時期は、中々作物が育たず、挙句に水不足でみんな飢え死に寸前だったんだって。
それでも、どうにかして食料を調達するも、すぐに底をついてしまう。
それで、このあとどうなったと思う??
ーーーー“新鮮な肉”の奪い合いが開始したんだ。
☆ ☆ ☆ ☆
「なあ、どうだい? 初めて食す“肉”の感想は?」
俺は、冷たいコンクリの床に座っている、四人の子どもにそう言った。四人共、一つの皿に盛り付けられた、焼いた肉を嫌々食べている。いや、強制的に食べさせられていた。
四人中一人は女の子で、あとの三人は男の子だ。
女の子は、泣きながら肉に食らいついていた。
「なあ」
俺は、泣いている女の子に声をかける。女の子の肩が恐怖で震えた。
「肉、美味いか?」
「……」
「美味いかって、聞いてるんだけど?」
「……お、おい、しいです」
怯えた目が俺を捉える。俺は、「そっか」とだけ言って、四人の食事風景を観賞した。
四人が肉をすべて平らげると、俺は座っていた椅子から立ち上がり、四人の前まで行く。
四人は、放心状態みたいになっていた。目に生気がない。
「おーい、生きてるか?」
「……て」
「ん?」
男の子の中で、一番年下っぽい子が口を開いた。
「おねがい! もう、おうちに帰らせて!!」
まだ、声変わりを迎えていない、高い声が“地下室”に響き渡る。男の子の懇願につられてか、残りの三人も次々に懇願してくる。
「帰りたい! 帰してください!」
「ひっく、パパとママにあいたいよぉ……」
「帰らせろよ!!」
「帰りたい、帰りたい!」
「……うるせぇよ」
ピタッと、うるさい声が止んだ。
最初のコメントを投稿しよう!