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いつものホテルで、横になっていたときに、彼が私の表情に気がついた。
「……分かってる癖に」
何度となく、他の女の人との関係について言及したことがある。
「仕方が無いだろ、男の性だよ」
「そんなことは分かってる。色んな人に気が移るのが男の性だ。でも、独占したいのも女の性だ」
「そうだな」
後ろからそっと抱きしめて、頭を撫でてあやされる。
こうやって、私はいつも彼を許してきた。
だから、私が悪い。
彼の抱きしめる力に身を任せた。
※※※
それから、彼と例の女の人は結婚の準備に入り。恋愛においての敗者となった私は、彼の元を去った。
※※※
数年が経って、街中で子供と遊んでいる彼の姿を見た。
きっと、私のことは覚えていない。でも、それでいいと思った。
ただ、静かに心の中に燻っている思いを、過去フォルダの中へと収納した。
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