暁色の町

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暁色の町

あれは、何時の頃だったかしらねぇ………。 私、この国に生まれて、色んな町を転々としながら暮らして来たのだけれど、私が暮らして来た町って、必ず震災に見舞われるのよね……。 最初に暮らした町は、兵庫県神戸市内なの。 ……そう。……私の生まれ育った町。 そこでね、私、阪神淡路大震災で家族の皆を喪ってしまって、今ではたった独りぼっち。 居場所を失った私は、偶然、Facebookで知り合ったお友達を頼りに暮らし始めたのが、岩手県宮古市田老町なんだけれど、そこも東日本大震災の被害で住めなくなって……。お友達も亡くなってしまって……。 遠い親類を頼りに北海道へ来てみれば………。 次に向かうは熊本県益城町………。 私って、呪われてるのかしらね? その日は私、東京都八王子市の町並みを独りでトボトボと歩いていたの。 昔、バイト先で知り合った相手が暮らしてる町なんだけど、町の名前は暁町。今はその町で落ち着いてるんだけれど……。 でも、私が生きてると、皆が迷惑してるみたいに思えてしまって……。私なんかが生きてるから、震災が起こるのかしら。そう思ってしまうと、私なんか早くいなくなればいいのに。そんな風に病んでしまうワタシがいる。 その日の夕方も、私、JR中央線のホームに佇みながら、悩んでた。 此処から飛び込めば、いなくなれるのかな? でも、電車に引かれたら、どんな感じがするんだろう?引き潰されて、真っ赤な鮮血が飛び散ってしまって………。 ……ダメ。……ダメ。……そんな死に方は私には無理な気がする。 ふと気が付いてみると、八王子の町の繁華街を歩いているワタシ。 目の前には、献血キャンペーンの自動車。 昔、死んだお婆ちゃんが言ってたっけ。 「……いいかえ。魂の腐った人間の血は、緑色になっちまうんだよ。アンタはそんな風にはなっちゃダメだからね!」 ……試しに、献血でもしてみようかしら? そこで、私が見たモノは、まるで暁色に染まった、私の身体の中に流れてる、赤い血。 献血を終えて、私、思ってみたの。 ……もう少し、頑張って生きてみようかしら? 私はふと、空を見上げた。 その日の夕方の空の色は、まるでこの国の旗のシンボルカラーの様に、真っ白くなった私の心を染めるかの様に、真っ赤に輝いているのだった。              《 第1話 完 》  
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