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もう少しだけ待っていて
おととなななさん@ototonanana のイラストに、SSをつけさせていただきました。
舗道に飛び出した白蛇を庇って交通事故に遭ったのは、紫陽花の花束を抱えた作家を目指している文学青年でした。
彼は事故によって右手を失ってしまうのです。
利き手を失い投げやりな毎日を過ごしているのを見て……白蛇は願います。どうか僕を人間にして下さい。そして……恩返しさせて下さい。あの人の右手になりたいのです。
すると不思議なことに……脱皮を繰り返すごとに、人の姿になっていくのです。
脱皮とは自分のためにする行為なのに、すべてはあの人のために……蛇としての人生を捨ててでも、駆け寄りたい相手でした。
いざ人の身体を手に入れ……青年の元に喜び勇んで駆け寄りますが……青年は少年があの時助けた蛇だと気付くはずもなく、無下な対応をして追い払います。
でも少年は諦めず……来る日も来る日もやってきて、青年も次第に気になってきます。
一方の少年は、蛇にも戻れず、人として役にも立てず、次第に弱っていきます。
そんなある日……雨が酷いので、ふと窓の外を見ると、いつも立っている少年の姿が見えません。
気になって……探しに行きます。
すると事故現場で、紫陽花の花束を持って倒れている少年を見つけました。
そっと傘を差し出し、青年が放った言葉は……
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