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澪生 2
おととなななさんが再び魚座くんを描いて下さいました。2023/10/30
とても可愛い優しい表情です。
絵からインスパイアされたSSを付けさせていただきました。
攻めの名前は Remo【レーモ】 船を漕ぐ人という意味です。
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船乗りの仕事は楽ではない。
いつも穏やかな海ならばどんなに良いか。
今日は荒れ狂い船が傾き、冷や汗をかいた。
頭から足先までずぶ濡れになり疲労困憊だが、家に戻れば日本から連れて来た美しい人魚の青年が待っている。
そう思うと、足取りも軽い。
彼の名はMio……日本名は澪生。
俺の故郷イタリアのヴェネツィアに連れてきて、もうすぐ1年となる。
彼は男性だが……
俺は彼を深く愛し、男同士で身体を重ねている。
今宵も抱いていいか。
俺の身体を癒やして欲しいんだ。
「Mio、おいで」
「Remo……」
Mioの優しい目元を見つめると、海の荒波のようにざわついていた心が静かに凪いでいく。
その美しいマリンブルーの瞳に心が吸い込まれそうだ。
ところが今宵は……
Mioは帯を解いた所で止まってしまった。
いつもならお気に入りの日本の着物を潔く脱ぎ捨て、凜々しく引き締まった身体で俺に跨がってくれるのに……
俺はその身体に、夜な夜な愛の刻印を押し続けるのに。
「どうした?」
「それが……」
少し困ったように俯き、それから俺の方をチラチラ見る。
「具合でも悪いのか」
「ここがね……少し変なんだ」
「ん?」
Mioが下腹部をそっとさすった。
「ん?」
「もしかしたら……」
「もしかしたら?」
「僕を航海に連れて行ってくれないか。少し長い航海がいい」
「どういう意味だ?」
Mioの横に座り。肩をそっと抱いてやると
「全てを投げ捨てて付いていく相手が出来たら……人魚は」
その言葉に、心臓が高鳴っていく。
「その愛する人との愛の結晶を孕み、育むことが出来るらしい。僕は人間の性別では男だが、男である前に人魚だから……きっと」
それって、それって――
「も、もしかして……俺の子を」
「そう、あなたの子を宿したようだ。ただ人魚の出産は、地上では出来ない。だから僕を海に……Remoの船で広い海へ連れて行って欲しい」
「あぁ俺は船乗りだ。Mioのために船を漕ごう、俺たちの子に会うために」
やがて出航の時がやってくる。
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イラストを見ていたら、オメガバースっぽい展開に自然となりました!
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