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【5】
マグカップのような重たいカップにお茶を淹れて私の前にとん、と置いた。
ナーガさんはどうした、というように向かい合わせに座り、私を見る。
さあて。夜這いなど初めてだ。
ぶっちゃけ処女ではないが、豊富な経験がある訳でもない。
そもそも合意がなければ強姦である。
ナーガさんにそんな酷いことをするつもりなどない。
いや、男性を襲うのも強姦と言うのか分からないが、「相手に嫌われてはいないであろう」という状況のもと、いきなりコトに及ぼうとしている自分の性犯罪者レベルはかなりのものだろう。
「おケガは、大丈夫ですか?痛いですか?」
私はお天気の会話をするように回り道をしてみる。
ああ心配して来たんだなとナーガさんは勘違いしたのか、ぐるぐると手を回したり、脇腹をポンポン叩いたりして大丈夫だとアピールをする。
「それは良かったです」
ヤバい。会話がもう思いつかない。
ええいままよ、っと私はナーガさんを見る。
「イチゴ………えーと、あの果物は、私が食べたいと言っていたから獲って来てくれたんですか?」
ナーガは少しはにかんで頷く。
30越えたオッサンのはにかみとか鼻血が出そうである。天使か。
私のナーガさんへの汚れきった欲望で汚してしまうんじゃないかとおののく。
「間違ってたらごめんなさい。………ナーガさんは、私の事が、す、好き、なんですか?」
ナーガさんは、ビクッ、とまるで叱られたかのような顔をして、それでも頷く。
その後、ハッ、と真顔になり頭を下げて来た。
「え?なんで謝るんですか?」
好きだと言われて舞い上がりそうだったのに何故謝罪されるのか分からなかったが、その後の背中を見せる仕草と、口をパクパクと動かす動作で何となく感じた。
多分、話も出来ないし背中に大きな傷がついてるような男に好きだと言われても、私が気持ちが悪いだけだろうと思っているのだろう。
「火傷やケガなんて誰でもしますから。声を出せなくても話は出来るじゃないですか」
私は立ち上がり、自作のワンピースを太ももまでめくりあげた。
何事かとギョッとするナーガさんに、太ももの一ヶ所を指差す。
そこには、未だに目立つ20センチを越えるミミズ腫れのような赤っぽい線が縦に走っている。
「ほら、ここなんですけどね、15の時に骨を折った時に縫われたところなんですけど、まだ痕が残ってるでしょう?」
交通事故と言っても分かるまい。
そっとナーガさんが近寄って来て座り込み目を近づける。見上げた瞳には「痛くないのか」といわれているようで、
「今は痛くないですよ。でも、女ですからね、目立つ傷は作りたくなかったですけど。やっぱり醜いでしょう?」
ナーガさんは首を振り、優しく傷痕に指を滑らした。
「………っっ」
傷痕をなぞられただけで震えが来るほど感じてしまった。
「ナーガ、さん、あのっまだお話が途中でして」
じっと傷痕を見ていたナーガは、また向かい合わせに座り、改めて私を見つめた。
危ない、下着も洗濯してて着けるの忘れていたので、ノーパンな上に既にアソコが濡れてしまった恥ずかしさで私は顔を赤らめた。
「………私も、ナーガさんが好きなんです」
私は、とうとう言いたかった事を伝えられた。
目を見開いたナーガさんは、本気かと言うように私を見るが、本気も本気である。
「なので、その………私をヨメにしてください!」
咄嗟にやったのは、色気もなにもない土下座だった。恥ずかしくてナーガさんの顔が見られなかったからだ。
どこ行った私の女子力私の色気。
ナーガさんが立ち上がった気配がして、土下座していた私の手を取り顔を上げさせられた。
ああ、この瞳(め)だ。
焼き尽くされそうな燃えるような熱い眼差しを間近で見て、私の理性が音を立てて崩れていく。
「私と、結婚してくれますか?」
強く頷いたナーガさんが、いきなり私を抱き上げると、藁の積まれた上に毛皮が敷かれた寝心地の良さそうなベッドに私を降ろし、服を脱がせた。
「腕、だいじょーー」
言いかけた私の口をナーガさんが貪るように舌で蹂躙する。
どんな早業なのか、ナーガさんが腰に巻いていた布は既に外されていて、固く反り返った彼のモノが私の太ももに当たる。その大きさに、久しぶり過ぎて入るのか心配になるほどだった。
ナーガさんは、やわやわと私の胸を優しく揉みしだき、乳首を舐めては吸い上げる。
「………んんっ………はぁっ」
ナーガさんの息づかいと私の喘ぐ声がメインのBGMだ。
「ああっ、そこはっっ、待っ」
私の腿の傷痕を指で撫でながら、足の間に顔を埋めるナーガさんが、指でクリトリスを弄りながら舐め回し、とろとろとこぼれ落ちる愛液を舌で受け止め飲んでいる。
ナーガさんの股間のモノが先程よりも大きくなっているように見えて、快楽の中にも不安がよぎる。
私の中に挿れようとするが、余りに入り口が狭いので、私に切ない目を向けた。
「大丈夫、ゆっくり入れて下さ、い」
返事のように、ゆっくりゆっくりと挿入してくるが、やはり大きい。パンパンで息が詰まりそうになる。
それでも、ぴったりと隙間なくナーガさんのモノが埋まった時には、圧迫感より喜びが勝った。
「ほら、入る、でしょう?」
私は頷くナーガさんの胸に手を伸ばす。
「心臓、ドキドキしてますね………私と同じ」
ナーガさんが私の胸に耳を当てる。
「ね?」
ナーガさんが顔を上げ、微笑んだ。
余りに心臓にダイレクトに来る可愛さに思わずギュッ、とアソコも締め付けられたようで、ナーガさんが苦しそうにする。
「後は、ナーガさんが気持ちいいように、動いて、下さ………んぁっ」
ゆるゆると抽送されるナーガさんの太いモノが、私の快楽を刺激してくる。
だんだん早まる抽送に、奥に当たるモノに、私も堪えられなくなり、
「あっ、ダメ!いっちゃう………!」
身体を仰け反らすと同時に、最奥にナーガさんが大量の白濁を放ったのを感じた。
息を整えてると、胸元にポトッポトッと水滴が落ちてくる。
閉じていた目を開くと、それは汗ではなくナーガさんの涙だった。
ぽろぽろと泣いているナーガさんが可愛くて、涙を拭い頭を撫でた。
「ずっと一緒にいましょうねナーガさん」
背中に手を回し、火傷の痕の薄い皮膚の所をそっとなぞった。
頷いたナーガさんは、私の胸に顔を埋めるようにすりすりと頬を寄せた。
でもちょっと待って。
股間に収まってるナニがちっとも萎えてないのは気のせいですか。
蕩けるような笑顔で腰を動かしてくるナーガさんに、そうだこの人童貞だった、一度や二度で終わる訳なかったと思ったのも束の間、私はまた快楽の渦に飛ばされた。
この時にはまさか朝陽が昇るまで続くとは思ってもいなかった。
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