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「ここにこられるということは、あなたも、相当なサイキックなのですね」
「さいきっく?」
美少女は、怪訝そうな顔をした。おぼつかない発音。忍と同じくらいの年齢のようだ。
「超能力者のことです、千枝さま」
「私は、あなたに”さま”と呼んでいただけるようなものではありません、天河の神社の巫女に過ぎないのですから。先ほどから、名乗っていただけ何のも、その証拠ですよね。高貴なお方、あなたは・・もしかして、天河の神様なのでしょうか」
「僕が神様なんて、そんなすばらしい存在ではないです。おわかりでしょう?僕はワルモノなんです」
「わかりません、あるいは、その悪人の面が強いお方なのかもしれませんが」
若い千枝さまは、素直に認めた、ということは、確かに忍は、悪人の匂いがぷんぷんとするのだろう。
「それは、神様の一面、個性なのではないでしょうか。神様は、光と闇の両面を常人以上に強く持っておいでで当然だと聞いていますから」
若い千枝さまも聡明だった。それは、満足していいことだった。そして、かわいい・・
かわいい・・
そんな感覚を、しかし忍は金輪際母親の千枝さまに抱くことはなかった。
それが、今は、彼の胸の中に湧き上がってくる。
ああ・・ああ、僕は、今、この少女を抱きしめたい。欲望が、その身を持ち上げてくる。
「なんということだ、なんということだ!」
ここは、聖なる場所ではないのか。ここで、こんなみだらな思いになるなんて、人倫にもとることではないか。それなのに、なんで、ここではそれが巻き起こる。こんなみだらな気持ちになったら、こんな不浄な思いにまみれたら、一発で、ここから放り出されて当然だ。
「高貴なるお方、どうしても、お名前を教えていただけないのですか。私のような下賎な巫女では、相手にすることも、汚らわしいとか、ですか」
「そ・・そんな」
「それは、愛でるにはふさわしくないということでしょうか」
「え・・・」
「ですから、私には、女としての魅力がないということなのでしょうか」
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