忍れど

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. 巨大な空間、  これは・・夜桜というしかない。  しかし、なんだ、これは、この幹は、盆栽の松ノ木が桜になってしかも何千倍かに巨大化したというしかない。  こんなべらぼうなものが、あの里山の地下空間にあるはずがないわけで。 ”異次元空間とか、かよ”  そういえば、役の小角の逸話にそんなのがあった気がする。 ”あいつの力の源泉は、ここにあったのだな”  この超巨大桜から力をもらっているというのも、何か変な感じがするのだが。  そうか、あの”真の救世主・東丈”は、だから、ここに飛んだのか。  そうだ、あのルーナ王女が見せた彼女の幻覚にびびった東丈は東京吉祥寺の家の二階から飛んで逃げた。  そのときのことだ。星空の夜・・あいつは闇雲に逃げ出したはずなのだが、その飛んだ先は・・この大台が原だったのだ。  そして、この地の”力”でそれを退治しようとした。  突然、脈絡もなく、そして忍とはまったく関係のない理解が彼の脳裏に浮かび上がった。  なんで、こんな自分と関係ない情報が湧き上がるのか・・ ”僕が、真の救世主に関係があるから・・か?”  それは、驚天動地の自覚だった。  リザーバ・・!  東丈がなんらか失敗したときのための、リザーバだったというのか。 ”僕は、悪人だぞ” 「善人なおもて往生を遂ぐ、いわんや、悪人をや」 「誰か、いたんだ」  これだけの空間だ、しかも、設定は闇夜。  となれば、そこらの物陰に誰かいても気づける道理はないか。 「”真の救世主”作戦が必ずしもうまくいかないかもしれない。しかし、その場合、まっすぐな救世主では、その業がならないとなれば、救世主とは違う個性が、別の方法でアプローチするしかないのではありませんか」 「その声は・・」思わず、忍は、それを口に出していた。それほど、聞き覚えがあり、衝撃だったからだ。 「その声は・・千枝さま、ですね」  しかし、そうではあるが、いささか若い。 「私を、ご存知なのですね。高貴なるお方、あなたは、どなたですか。役の小角さま、あるいはその縁者の方ですか」どこからともなく現れた緋色の袴をはいたその美少女は言った。 「千枝さま、ですね」 「はい・・杉村千枝・・天河の神社での巫女をしております。その修行のために宮司様から、この玉置山に上がるようにご命令をいただきました」 「杉村・・千枝さま・・ですか。そうか、旧姓は、杉村さんだったんだ」 「旧姓?わかりません、それより、どなたですか、あなたは、高貴なお方」
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