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 山を少し登った先にある施設は、なんだかちぐはぐだった。  手前の施設は学校だって分かる形や雰囲気だけれど、中はそれなりに綺麗になっている。地域の集まりや合宿所なんかで貸し出される施設で、ちゃんと風呂もついているらしい。旧教室のいくつかが、畳に布団の部屋になっている。  そのくせ奥の方には木造でボロボロの小さな校舎がある。古い学校の、更に旧校舎。二階はなくて、一階平屋だ。 「案外涼しい」 「な」  木々が丁度いい感じの日除けを作っているし、そういう場所を通り抜ける風は涼しい。アスファルトを歩いてきた時よりもずっと気持ちがよかった。  中に入るとホワイトボードに部屋割りが張り出されている。それを見て、俺は動揺しまくった。 「一馬と一緒だ」 「ってか、数余りで俺達二人部屋かよ」  三人部屋もあるし、俺達と同じ二人部屋もある。多分普段から気の合う奴等が一緒なんだ。そして俺達が幼馴染みで元々仲が良かったのは、高校でも知られている。その位、小・中・高校と持ち上がりだ。  ……マジかよ。  チラリと盗み見た涼太は、なんだかとても曖昧に笑っていた。  初日は午後から施設の使い方や禁止事項が伝えられ、間違っても女子部屋に行かないように言い渡された。二階の東西で男子、女子が別れていて、その中間の部屋が教職員の部屋になっている。しかも見回りもあるとか。  その後、明日から始まる合宿で使うテキストやらを配られ、日程が配られ、カリキュラムが配られ、一日の終わりにテストをしてダメなら自由時間は補講に取られるという地獄を聞かされたら午後は終わっていた。 「マジで死にそう」 「凄い量だね。まぁ、俺達もう三年だしね」  手に重たく感じるテキストを部屋のテーブルに置いて、俺はぐったり畳に座り込む。その間に涼太は部屋の窓を幾つか閉めた。 「まぁ、でも思ったよりは綺麗だし、ご飯は美味しいらしいよ」 「風呂もけっこう綺麗だったな」 「最終日の夜はグラウンドで花火だしね」 「あぁ、肝試しもあるな」  何の気なしに言った俺の言葉に、涼太がビクリとする。こういう所だけ目敏い俺は、意地悪に笑った。 「何だよ涼太、お前まだ怖いのかよ」 「仕方ないだろ。それに見た? すっごく古くて怖いよ」 「トイレ付き合うか?」 「うっ! ……お願いするかも」 「マジかよ」  心なしかちっちゃくなる涼太を笑いながら、俺は内心ではモヤモヤしてしまう。  こういう所は昔から変わらない。だから……こんなに見た目が変わっても俺はコイツが気にかかってしかたがないんだ。
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