4人が本棚に入れています
本棚に追加
第1章:武士の誇り
「せいっ、はっ。」
半兵衛が木刀を振る声が庄屋の屋敷中に
今朝も響き渡る。
屋敷には梅の花が美しく咲き誇り
春の訪れを告げている様だ。
半兵衛の掛け声を聞いた奉公人の弥助は
そそくさと台所へ行き朝飯の支度を始めた。
この屋敷の奉公人は弥助一人だけである。
毎日の家事を一人でこなすのは
目が回る程に忙しい。
日々の疲れもあってか
小声で愚痴をこぼす事も多々ある。
「旦那様は朝から精が出なさる…。
百姓が剣術なんぞ稽古した所で
役に立たねぇってのに…。」
半兵衛は播磨国多可郡で庄屋(地主)として
暮らしており自分の農地を数多くの小作人に
貸し付けている比較的裕福な百姓ではあるが
この辺りの百姓達の間で半兵衛の
剣術熱心さは有名なのである。
最初のコメントを投稿しよう!