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しかし将監は訳あって
武士の身分を捨て播磨国多可郡に移り住み
百姓になったのである。
半兵衛は祖父:将監を忌み嫌っていた。
将監が奥野家の家名に泥を塗った為に
一族は百姓に身を落とす事になったのである。
祖父:将監は四年前に亡くなり
父であった伊右衛門も二年前にこの世を去った
半兵衛は齢二十五にして
この家の家督を継いだのだ。
半兵衛が剣術に傾倒するのは
祖父:将監が失った武士の誇りを
取り戻さんが為である。
かような事をしても武士の身分には
戻れない事を半兵衛も分かっているのだが
(自分は祖父とは違う…。
武士として誇りだけは捨てたくない。)
ただその一心で剣術の稽古に
励んでいるのである。
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