第1章:武士の誇り

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しかし将監(しょうげん)は訳あって 武士の身分を捨て播磨国多可郡(はりまのくにたかぐん)に移り住み 百姓になったのである。 半兵衛は祖父:将監を忌み嫌っていた。 将監が奥野家の家名に泥を塗った為に 一族は百姓に身を落とす事になったのである。 祖父:将監は四年前に亡くなり 父であった伊右衛門(いえもん)も二年前にこの世を去った 半兵衛は(よわい)二十五にして この家の家督を継いだのだ。 半兵衛が剣術に傾倒するのは 祖父:将監が失った武士の誇りを 取り戻さんが為である。 かような事をしても武士の身分には 戻れない事を半兵衛も分かっているのだが (自分は祖父とは違う…。 武士として誇りだけは捨てたくない。) ただその一心で剣術の稽古(けいこ)に 励んでいるのである。
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