3

2/5
274人が本棚に入れています
本棚に追加
/209ページ
「じゃあ、後の事はお願いね?私は迷惑を掛けてしまったマスターさんに事情を説明しておくから。」 「はい・・・あの、リシェルさん?今回は本当に・・・申し訳ありませんでした。」 常備していた注射器で鎮静剤を投与すると、あんなに錯乱して取り乱していたリリーは、ものの数分で深い眠りに就いた。 リリーが落ち着いた頃、病院へ連絡を入れた年配の女性・・・リシェルは応援と救援を要請する。 それから程なくして、リシェルからの連絡を受けた病院の職員は店の前までリリー達を車で迎えにやって来た。 職員にリリーと双子の男の子達を任せ、リシェルはベサニーに小言を言った後、[小声で少しばかり念を押してから]病院へと帰らせていく。 「ごめんなさいね、マスターさん。こんな朝っぱらから、ご迷惑をお掛けしてしまったみたいで。」 「まぁ・・・[確かに迷惑ではあった]な。」 「・・・・・・正直者なのね、貴方。」 走り去る車が見えなくなると、リシェルは深いため息を吐き出し、先程までリリーが座っていた椅子へと腰掛ける。 「まぁ、あれだ。[アンタらも苦労してる]みてぇだな。大変だろ?[重度の精神障害]と[記憶障害]を(あわ)せ持ってて・・・[幼児退行までしちまってる患者の世話]なんてのは、な。」 「・・・[マスターさんは随分と察しが良い]のね?私も少しは説明する手間が(はぶ)けそうだわ。」 疲れたような表情を見せながら、リシェルはリリーが注文した飲み物よりも[若干、準備をするのが面倒臭い]ロイヤルミルクティーをホットで注文した。 真琴の到着までにはまだ時間があり、店の開店まではまだまだ時間に余裕がある中、漣は何故か[開店前から既に仕事をしているような気がしなくもない]。 リシェルの目の前に無言で飲み物を差し出し、漣は再び換気扇の前まで移動すると新しいタバコに火をつける。 「それに、リリーは・・・いや、[違うな]。リリス・・・[でもねぇ]か。アンタらは知らねぇだろうがな?[リリアは数年前に1度だけ、この店に来た事があんだよ]・・・[ああいう風になっちまう前に]、な。」 「という事は・・・[マスターさんはご存知]なんですね?あの子・・・リリアが[何故、ああなってしまったのかという理由(ワケ)]と[その原因]を。」 「・・・・・・[あぁ]。」 問いただすようなリシェルの言葉に漣はコーヒーを一口飲んで喉を潤した後、少しの間を置いて短い肯定の言葉を呟いた。
/209ページ

最初のコメントを投稿しよう!