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「じゃあ、後の事はお願いね?私は迷惑を掛けてしまったマスターさんに事情を説明しておくから。」
「はい・・・あの、リシェルさん?今回は本当に・・・申し訳ありませんでした。」
常備していた注射器で鎮静剤を投与すると、あんなに錯乱して取り乱していたリリーは、ものの数分で深い眠りに就いた。
リリーが落ち着いた頃、病院へ連絡を入れた年配の女性・・・リシェルは応援と救援を要請する。
それから程なくして、リシェルからの連絡を受けた病院の職員は店の前までリリー達を車で迎えにやって来た。
職員にリリーと双子の男の子達を任せ、リシェルはベサニーに小言を言った後、[小声で少しばかり念を押してから]病院へと帰らせていく。
「ごめんなさいね、マスターさん。こんな朝っぱらから、ご迷惑をお掛けしてしまったみたいで。」
「まぁ・・・[確かに迷惑ではあった]な。」
「・・・・・・正直者なのね、貴方。」
走り去る車が見えなくなると、リシェルは深いため息を吐き出し、先程までリリーが座っていた椅子へと腰掛ける。
「まぁ、あれだ。[アンタらも苦労してる]みてぇだな。大変だろ?[重度の精神障害]と[記憶障害]を併せ持ってて・・・[幼児退行までしちまってる患者の世話]なんてのは、な。」
「・・・[マスターさんは随分と察しが良い]のね?私も少しは説明する手間が省けそうだわ。」
疲れたような表情を見せながら、リシェルはリリーが注文した飲み物よりも[若干、準備をするのが面倒臭い]ロイヤルミルクティーをホットで注文した。
真琴の到着までにはまだ時間があり、店の開店まではまだまだ時間に余裕がある中、漣は何故か[開店前から既に仕事をしているような気がしなくもない]。
リシェルの目の前に無言で飲み物を差し出し、漣は再び換気扇の前まで移動すると新しいタバコに火をつける。
「それに、リリーは・・・いや、[違うな]。リリス・・・[でもねぇ]か。アンタらは知らねぇだろうがな?[リリアは数年前に1度だけ、この店に来た事があんだよ]・・・[ああいう風になっちまう前に]、な。」
「という事は・・・[マスターさんはご存知]なんですね?あの子・・・リリアが[何故、ああなってしまったのかという理由]と[その原因]を。」
「・・・・・・[あぁ]。」
問いただすようなリシェルの言葉に漣はコーヒーを一口飲んで喉を潤した後、少しの間を置いて短い肯定の言葉を呟いた。
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