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「彼女の旦那さんが、その・・・逮捕されたって事は・・・知ってるかしら?」 「あぁ、[知ってる]よ。[当時はニュースで大々的に取り上げられてた]じゃねぇか。ロイドは[誘拐犯]で[殺人犯]。それに・・・[食人鬼]だってな。」 漣はまるで当時を思い出しているかのように目を細めて天井を見上げる。 天井に向けてタバコの煙を吐き出す漣を眺め、リシェルは重々しく口を開いた。 「私も後から聞いたのだけど・・・当時の警察は[リリアもロイドさんの共犯者だと疑っていた]らしいわ。だから、警察も任意という形でリリアに事情聴取をしたの。そして、ロイドさんの犯行を[包み隠す事なく、全て話してしまった]のよ・・・[何も知らないリリアに対して]、ね。」 「・・・・・・・・・。」 「愛するロイドさんの犯行を[リリアも信じたくはなかったと思う]わ。それと、自分が・・・[人を食べてしまったという事実を]。それから、自分が知らない間に・・・[唯一の肉親である妹のリリスを食べていたという事実]が・・・[リリアの心が壊れる事となった最大の決め手になってしまった]の。」 そこまで一気に話したリシェルは右手でカップを持ち、漣が用意してくれたロイヤルミルクティーにようやく口をつける。 少しだけ気分が落ち着いたのか・・・リシェルは安堵のため息を1つ吐くと、更に言葉を紡ぎ出す。 「半狂乱になってしまったリリアを見て、警察もそこでようやくリリアが何も知らなかったという事に気が付いたの。でも、[気付いた時にはもう既に遅くて]・・・さっきも言ったでしょう?[全て話してしまった]と。それに、私は[包み隠す事なく]、とも言ったわね?」 「警察は何も知らねぇリリアに・・・いや、違うな。[妹のリリスだと思い込んでいる姉のリリアに]対して・・・[お前は姉のリリアだ]、と。本人に直接、面と向かって[現実を突き付けた]んだろ?リリアにしてみりゃ・・・それは[まさにトドメの一撃]ってやつだったろうな。」 漣がチラリとリシェルの方に視線を向けると、リシェルは困ったような・・・どこか複雑そうな表情の笑みを浮かべていた。 だが、リシェルはそのまま言葉を続けていく。 「えぇ、そうなの。[重度の思い込み]と[無意識の演技]。何も知らなかったとはいえ、[食人行為までしてしまった]上に[愛する人の裏切り]と[唯一の肉親の喪失]。沢山の事象が重なって・・・[リリアの心は完全に壊れてしまった]わ。」 「[現実を受け入れる事を拒否した]結果・・・絶えきれなくなった精神は[幸せだった幼少時代に遡っちまった]って訳か。だが、リリアは[幼少時代、既にロイドと出会っちまってる]。だから、[現実を認めたくない]リリアは・・・[幼児退行と同時に記憶障害を併発(へいはつ)した]。」 「・・・貴方、本当に喫茶店のマスターさんなの?探偵とかじゃなくて?」 「・・・・・・・・・。」 自分が事情を説明するよりも[既に事情を察してしまっている]漣をリシェルは首を傾げて不思議そうに見つめた。
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