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バタバタと慌ただしく過ぎ去った年末を乗り越え・・・そして、いつの間にか年が明けた。
そんな中、この街はもう少ししたら日中が穏やかに過ごしやすくなる気候に移り変わろうとしている。
そう、この街には・・・[またもや、春の季節が訪れようとしていた]。
~チリンチリン~
「誰だ?店はまだ開い・・・っ?!」
「勝手にお店の中に入ってごめんね、おにーちゃん?」
[店の営業時間にはまだ随分と早い]時間帯。
本日のランチやデザートの仕込み等を黙々と準備していたところ、不意に店内へと鳴り響いた風鈴の音に漣は僅かに顔をしかめて振り返った。
ちなみにどうでもいいかもしれないが、本日のランチは北海道の郷土料理・豚丼と三平汁に松前漬け、デザートはいも餅である。
店内に入って来た人物を視認した瞬間・・・漣は思わず[息を飲んだ]。
「あのね?お店が準備中だっていうのは外の看板で分かってたの。でもね?ほんの少しの時間でいいから[休憩させてくれないかな]、おにーちゃん?」
「許可を求めておきながら、既に座ってんじゃねぇかよ・・・[俺の許可を取る前に]。」
えへへっと、あどけなく笑う目の前の人物に漣は盛大にため息を吐き出しながら、仕方ないといった様子でカウンター越しに向き合う。
そして、これまた仕方なさそうに飲み物を尋ねてみると、目の前の人物はホットミルクティー!!と[微妙に準備をするのが面倒臭い]飲み物の名を上げた。
「アンタ・・・さっき、休憩って言ってたよな?[こんな朝っぱらから、何かしてたのか?]」
完成したホットミルクティーを差し出した漣は、ついでだと言わんばかりに目の前の人物に質問を投げ掛ける。
「うん、そうだよ。え〜っとね?私、今は[かくれんぼをしてる]んだ!!」
「・・・・・・[かくれんぼ]?」
こんな朝っぱらから?と、疑問に思う漣を無視して、目の前の人物は両手でカップを持ち、フーフーと息を吹き掛けながらホットミルクティーを啜った。
「このミルクティー、とっても美味しいね!!ありがとう、おにーちゃん!!」
「・・・・・・どういたしまして?」
「褒められてるのに[どうして、疑問形なの?]」
そう言って、目の前の人物は漣の反応に首を傾げる。
「なぁ?アンタはこんな朝っぱらから[なんで、かくれんぼをしてんだ?]つーか、その前に・・・[一体、誰とかくれんぼをしてんだよ?]」
漣は仕込みを再開しながら目の前の人物に尋ねてみた。
すると、漣の作業を興味津々といった様子で覗き見しつつ、目の前の人物は口を開く。
「んーとね・・・じゃあ、おにーちゃんにお話してあげる!!おにーちゃんは勝手にお店の中に入って来た私をお店から追い出したりしない、優しいおにーちゃんだもんね!!」
屈託のない笑顔を漣に向ける目の前の人物は両手にカップを持ったまま、無邪気に語り始めた。
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