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幸子がパート帰りに郷田と軽い食事をして、マンションの駐輪場に自転車を止めた頃には夜の九時を過ぎていた。郷田は車で送ると言ったが、自転車がないと朝から困るからと幸子は断った。
古い五階建てのマンションにはエレベーターが無い。そろそろ五十に手が届く幸子には、五階までの階段は一苦労である。重い荷物がある日などは尚更にそうだった。行く行くは引越をとも幸子は考えていたが『こんなボロマンションが売れるだろうか』などと息を上げながら町田幸子は玄関まであと数段の階段を恨めしそうに見上げた。
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