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「ポン太、行くよ!」
思い立ったが吉日。私はポン太をひょいと抱えあげると、噂の保護猫カフェがある場所へと向かって走り出す。藁にもすがる思いだった。
『え、ちょ、なんだよう。下ろせ』
「あとで〝にゅーる〟あげるから!」
いきなり抱きかかえられ、私の腕に爪を立てるポン太だったが、私がそう言うと爪を引っ込めた。
ちなみににゅーるとは、猫用のおやつの名前だ。スティック状のパッケージから練り出されるそれに、狂ったように猫達が群がるCMが度々流され、猫界の麻薬とも称されている。
『しょうがないなあ』
あっさりと大人しくしてくれる。会話が出来て良かったと心から思った。
「絶対、なんとかするからね」
自分が置かれている立場なんて分かっていないと思うけど、私はポン太に優しく言った。半ば、自分を励ますように。
にゃあ、とポン太は返事をするように一度だけ鳴くと、その後は特に抵抗もせず、私には抱かれたまま大人しくしてくれていた。まあ確実に、にゅーるのためだろうけれど。
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